「グレーゾーン」という言葉を聞いたことがありますか?白でも黒でもなくその中間という意味合いで用いられる言葉ですが、様々な場面で用いられます。
発達障がいや知能指数など発達面においても用いられることがあります。この発達における「グレーゾーン」とは一体どんなものなのか、理解する上での注意点や関わり方についても解説をしてきたいと思います。
今回は知っていると得する、発達におけるグレーゾーンについての色々なお話です。
発達のグレーゾーンって一体なに?
冒頭でも述べたように、「グレーゾーン」という言葉自体の意味は、白と黒の中間を指します。
また、自閉スペクトラム症(ASD)の”スペクトラム”とは日本語で連続性のことを指し、健常者と、診断される人の間にはっきりとしたボーダーラインはなく、様々な特性や特徴がグラデーションのように連なっていることを意味しています。以前に、発達のでこぼこについての記事を出していますので詳しくはそちらをご参照ください。つまり、発達におけるグレーゾーンというのは、特性はあるし生きにくさも感じているが、「診断がつくほどでもない」とか「ギリギリ社会生活を営めている」というゾーンを意味しています。
あるいは「気になる子」「気になる人」として学校や社会において周囲から捉えられているかもしれません。
何がグレーなの?
発達でこぼこの記事では、「深く分かる力IQ」と「人と関係を築く力」とに分けて解説をしました。
◾️深くわかる力 IQ
IQについてイメージしやすい方が多いかもしれませんが、IQが一定以上低いと「知的に遅れている」となるし、IQが一定以上高いと「知的に高い」(これはこれで生きにくいのですが)となりますよね。
そして、IQが平均には及ばないが、知的に遅れている水準でもないゾーンは「境界域」と言われています。IQにおけるグレーゾーンとも言えるかもしれません。
いろんな知的能力が全体的に境界域の水準であるという場合もあるし、知的能力の中でも得意と苦手の差が大きく全体として境界域という場合も多いです。この場合、知能検査をとらないと詳細が分かりにくいという点があります。つまり客観的にみていると、ある分野が得意で能力を発揮できるけども、ここは苦手。もしかしたら手を抜いているのではないか、サボっているのではないかという誤解を受けかねません。あるいはすでにそういう扱いを受けていて、気持ち的に落ち込んでしまって、病院を受診し検査を取ってみたらでこぼこが発覚したというケースも少なくありません。
◾️人と関係を築く力
では、「人と関係を築く力」についてはどうでしょうか。この力が低いと、他者からの働きかけを察知したり、察知できてもどのように応答していいのか分からないかもしれません。この力におけるグレーゾーンでは、暗黙の了解や一般的な常識が分からないとか、具体的に言わないと分からない、のような訴えが多いように感じます。つまり、他者の表情を読み取るなどのノンバーバルな情報のキャッチや周囲の情報から先を予測するということに苦手さを感じやすいのかもしれません。
小学校に入ると他者と言葉を用いたやりとりが増えて、冗談や比喩、約束事など様々な難しい対人関係上の壁にぶつかります。日常生活は普通に過ごせているけど、年齢が上がれば上がるほど対人関係は高度になっていき、謙遜やお世辞、その場のノリみたいなものを含めると、もうしっちゃかめっちゃか!みたいなケースはとても多いです。
◾️多動衝動性の場合
あるいは多動衝動性の高い方というのは社会にも多くいらっしゃいますよね。ポジティブに見ると「行動力がある」「決断力がある」とか言えますが、もしかするとその裏で数え切れない衝動性に関わる失敗(忘れ物、落とし物とか)があったり、落ち着きのなさから病院の待ち時間などが苦痛という方もいるかもしれません。もちろん仕事を詰め込み過ぎてしまって体を壊してしまうというのは生活に影響が出ていますから問題になるわけです。
関わり方
気になる子への関わり方
上記の特徴から、お子さんの場合「わかること、できること」と「イマイチ分からないこと、苦手なこと」に極端な差がある事が多いです。それはサボっている可能性もありますが、特性由来のものかもしれません。「わかる事、できること」と「イマイチ分からないこと、苦手なこと」に共通点があるのならば、その子が「キャッチしやすい情報と、キャッチしにくい情報」があるかもしれませんね。例えば、目から入る情報の方が理解しやすいとか、静かな場所で言われたほうが覚えやすいとか。もし共通点がなかったとしたら、色々な手段を実験的に試すことが必要かもしれません。大切なのは、「ダメ出しよりも、良いところ見つけ、具体的な指示」です。私たちが慣れないことをした時に「違う」「そうじゃない」「また同じことやっている」と言われたら混乱するし、やる気も失います。反対に「ここまではOKだよ」「ここからはこうしてみて」と良いところと具体的な指示で、明るくなることだってあるはずです。
気になる人への関わり方
正直、子どもも大人も関わり方は変わりません。というか、グレーでも白でも黒でも一緒です。基本的に対人関係は「ポジティブフィードバック」「分かりやすくて具体的な言い方」で悪い方向にはいかないと思います。
ポジティブフィードバックとは、物事に対して良い面のみを伝え返すことを言います。時々「悪いところを指摘した方がその人のためである」という主張をする人がいますが、そういう考え方ももちろんあるしアリだと思います。でも、その人との関係性はできていますか?相手の方は、その意見を求めているでしょうか?相手の方にとって地雷ではないでしょうか?そういった様々な要素をひっくるめた上で、ポジティブに伝え返すというのはリスクが少なく安全です、少なくとも関係性は悪くはならないと思います。意外とこちらが指摘しなくても、問題は解決したり、そもそも自分が思っているほど悪いところではなかったりもします。
そして少し触れましたが、グレーゾーンの方というのは日常生活が営めている方々を基本的には指していますが、その方の特性というのが強みになる場合も往々にしてあります。効率的に考えることに長けていたり、数字の扱いが得意だったり、行動力があったり、空気を読まずに発言できたり、長所となって生活に良い影響を与えることだってありますよね。
一方で、ネガティブな評価による自己肯定感の低下や自己否定的な感情が伴うこともあります。ポジティブフィードバックというのは生涯大切になってくる関わり方です。
まとめ
テーマとしてはグレーゾーンがあがっていたわけですが、内容としては対人関係の内容が多くなってしまいました。
カウンセリングでも様々な方にお会いしますが、その方の長所やストロングポイントというのはとても重要視しています。ポジティブフィードバックを他人にできるということは、自分自身にもその眼差しを向けられるという 証拠でもありますから、ぜひ取り組んでいただいて、自身にもポジティブフィードバックしていただけたらと思います。
皆様の理解の一助になれば幸いです。
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