私たちは普段生活している時には落ち着いて客観的で慈悲があって・・生きたい自分を生きられているかもしれません。ただ、気持ち的に安定しなかったり、イライラ、不安、緊張、悩み事に悩まされることが増えると、そういった自分らしくいられないと感じることも多くなるのではないでしょうか。そして、「自分らしくない」とか、「嫌いな自分」のように、本来の自分とは別の自分に入れ替わってしまったかのように感じることもあるかもしれません。今回は、感情が暴走するあまり、自分らしくいられないと感じている方や、感情コントロールについてもっと考えを深めていきたい、選択肢を持ちたいという方におすすめしたい内容となっています。
今回は知っていると得する、自分の中にいる人たちについてのお話です
私の中に居る、いろんな人たち
私たちは冷静な時と焦っている時、怒っている時、悲しくなっている時、パニックになっている時など心の状態によって性格や振る舞いが違っていませんか?怒っている時には衝動的だし言動は激しくなっているかもしれませんし、悲しい時には思考はマイナス思考であまり動きたくないかもしれませんね。
そのように、心の状態によって私たちの言動は大きく影響を受けています。そして、この気持ちや心の状態一つ一つに対して、人格があると考えてみましょう。例えば、イライラした時に出てくる「イライラさん」悩んでいる時に出てくる「モヤモヤさん」、緊張している時に出てくる「どきどきさん」などなど・・・。名前はなんでもいいので馴染みのあるネーミングでいいと思います。
ディズニー映画の「インサイド・ヘッド」を観たことのある方はイメージしやすいかもしれませんね。
そして、私たちの頭には操縦席があり、普段は冷静な年齢相応の自分が座っているのですが、状況に応じて「イライラさん」や「モヤモヤさん」が操縦席に座ってしまうと、私たちの言動は感情に簡単に支配されてしまいます。感情が爆発して、後になって冷静になって考えると恥ずかしくなったり後悔してしまうというのは、興奮している時に操縦席を開け渡してしまっているということが原因なのかもしれません。
あくまでも操縦者は年齢相応の自分であるべきで、そのほかの人格たちは「コメンテーター」くらいの立ち位置がちょうど良かったりするのですが、あまりにストレスが強かったり理不尽な状況が続くと、コメンテーターの席を飛び出して操縦席のハンドルを握り出すことがあります。
あなたの年齢が10歳だとしても80歳だとしても、あなたの年齢なりに育った「一番賢いあなた」のことです。賢いというのを詳細にすると、落ち着いて客観的に考えることができ、自分にも他人にも思いやりや優しい慈愛の気持ちを向けることができる、ということです。あなたが10歳なら10歳なりの、80歳なら80歳なりの人生経験を前向きに使うエネルギーを持っています。健康に生きるためには年齢相応の私の活躍は欠かせません。心のバランスが整っていることで年齢相応の私を意識できることが多いです。忙しすぎたり、ストレスが溜まっている時にはこの年齢相応の私という存在を見失いやすくなります。「本来の自分」と言い換えることもできるかもしれません。
いろんな人格さんたちの役割
この自分の中に住んでいるいろんな人たちは、居候ではありません。私たちにとって必要だから存在してくれています。
- 怒りにまつわる「イライラさん」の場合
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イライラさんが登場することにより不条理な状況に対して主張ができたり自分を守るために必要なエネルギーを捻出することができます
- 緊張した時に出てくる「ドキドキさん」の場合
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ドキドキすることで心拍数をあげてパフォーマンスを上げるための準備をすることができます。人間は少しくらいドキドキしていた方がパフォーマンスが上がるという研究結果があります。
- 悲しい時に出てくる「シクシクさん」の場合
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涙を流したり弱音を吐くことで周囲からのサポートを得やすくなり、辛い時に周囲からの支持を得ることができます。これは人間の性質として困難な時には集団で協力して乗り越えるという遺伝子レベルの知恵が関わってきています。
このように、いろいろな感情、それにまつわる人格には存在理由があり、あなたの中に必要のない感情や人格というのは存在しません。それぞれが「ストレスを経験した時にどうやって乗り切るか」について知恵があります。
頭の中の操縦席について
ロボットアニメのようにあなたの頭の前頭葉の部分をぱかっと開けるとそこには操縦席があるとしましょう。その操縦席に座ると、思考パターンや行動パターンなど様々なものが反映されて操縦者の特性に基づいた動きをします。この記事を読んでいるあなたの操縦席には誰が座っているでしょうか?もしかすると、「年齢相応の私」かもしれません。イライラしながら読んでいる方は「イライラさん(仮)」かもしれませんね。この記事の感想ひとつとっても、操縦席に誰が座っているのかで感想が変わってくることでしょう。そのくらい、操縦者の視点で現実を見るので受け取り方が変わってくるのです。
イライラしている時の世界の見え方と、悲しい気分の時の世界の見え方と、年齢相応の私の時の世界の見え方はきっと違っているはずです。世界の見え方が違うと、出てくる考えも違うし、行動だってもちろん変わってきます。
お分かりのように、現実社会を生きるために大切なのは「年齢相応の自分」です。ただ、ストレスを感じたり辛くなってしまった時にはコメンテーターである様々な人格たちからのアドバイスがとっても重要なのですが、操縦席には座らせてはいけません。
One Team (ワンチーム)が理想的
ここまで繰り返し述べてきた、操縦席に座るのは年齢相応の私、いろんな人格さんたちはあくまでも「コメンテーター」であるべきというお話。これは年齢相応の私を中心としたチームを作れるのが一番の理想といえます。チームですのでお互いの意見を尊重し合うことができます。誰かが誰かの意見を無視したり中心である年齢相応の私を無視した行動は慎むべきですよね。これは同時に、年齢相応の私がいろんな人格さんに対して優しく存在を認めてあげる必要があります。むしろ感情が乱れることなんてウェルカムですけど、くらいの。
具体的に言うと、何か理不尽なことがあった時のことを考えましょう。イライラしてきて扉を閉める時の力が強くなったり、ぶつぶつと文句や愚痴を言い始めます。頭の中は理不尽なことへの恨みや悪口の思考がグルグルと渦を描きどんどんネガティブ思考の沼にハマっていきます・・・この場合操縦席に座っているのは誰でしょうか。もしかするとイライラさんかもしれないし、また別の誰かかもしれません。年齢相応の私でないことは確かです。
では次の場合はどうでしょうか。理不尽な体験をした時に、イライラして扉を強く締めた時に、「あれこの感じ・・イライラしてるな。あんなことがあれば私がイライラするのもわかるなー・・」と途中でイライラさんが操縦席に座りかけていることに気づき、イライラさんに「あなたが操縦席に座りたくなる気持ちもわかるよ」と共感することができました。まるで、小さな子供がイライラしているのを慰めるようなイメージです。胸の部分を撫でて「よしよし」するのも良いかもしれませんね。この場合、再び年齢相応の私が操縦席に座っていることが分かります。
ポイントは、出てくる人格さんを厄介者扱いして上から押さえつけるコントロールをしないことです。子どもを扱うように、「わかるわかる」「こう言う理由で出てきてくれたんだもんね」「ありがとうね」など懐柔すると良いかもしれません。先述しましたが、出てくる人たちは皆役割を持っていて必要があるから出てきているのです。操縦席に誰が座っているのか、に気づくことができれば、無理やり引きづり降ろす必要はありません。だって気づいた時にはもうすでに、年齢相応のあなたが座っていると思いますよ。
そして、チームであるのが理想的な理由はもう一つあります。年齢相応の私といろんな人格さんたちで会議をして、今後の具体的な行動を決められるというメリットがあります。人格さんだけで決めてしまうと、客観的、社会的にマズイ行動をとるかもしれません。そういうのが得意なのは年齢相応の私だけです。「本当はこうしたいんだ!」という人格さんの意見と、「いや待って、今の状況的にこうしていくのがいいかもしれない」と一歩引いた視点でのやり取りができるようになります。
コメンテーターの意見は真実ではない
朝の情報番組などで司会の方とコメンテーターがいるという構成の番組を見たことがありますか?その中で、事件に対して専門家の立場から、とか視聴者を代表して芸能人の方がコメントをする場面があります。そこでなされるやり取りというのは、あくまで「その人の意見」であり、事件の真相や裏打ちされた事実、真実ではありません。これは明確ですよね。私たちの頭の中は、常に思考が渦巻いています。言うならば、朝の情報番組を24時間リアルタイムでぶっ通しでやっている感じです。「今のあの人の言い方についてどう思いますか?」「いやあの言い方は完全に私を馬鹿にしていますね」「もしかすると私のことを嫌いになっているかもしれませんね」、「私の人生経験から言うと、このパターンは私がどんどん孤立していって居場所がなくなって・・・」と永遠に続いています。これを、今までの考え方で見てみましょう。コメンテーター席に座っているのは様々な人格さんです。そしてあるときに、操縦席を奪われて、その人格さんの考え方が「あたかも真実のように」捉えていってしまうのです。
ただ、人格さんの意見は「真実ではない」です。その理由は今まで述べてきました。あくまでもその人格さんの気分や感情にまつわる特性が反映されているだけなのです。人格さんの意見を間に受ける必要はありません。でも人格さんを無視したり攻撃する必要はありません。チームなので。「よしよし」しておきましょう。あるいはイメージの中で、TVのチャンネルを替えてみてもいいかもしれません。私はもっぱら「孤独のグルメ」に替えて、この後の食事について五郎さんになりきって考えるようにしています。
まとめ
あなたの操縦席に座っているのは誰ですか?をキーワードにここまで述べてきました。年齢相応の私か、人格さんたち。それぞれ凸凹とした特性を持った個性豊かなキャラたちです。長所短所がありますが、長所を活かしあっていくことでより人間らしい生活ができると良いなあと思います。それはまるでワンチームとして、困難に立ち向かっていくイメージです。
今回は「インナーチャイルド」とか、「傷ついた自己」とかより複雑なものは述べていません。これはまたの機会にしますね。
皆様の理解の一助になれば幸いです。
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