私たちは常に物事を感じ、考え、推測したり過去を思い出したりしています。ぼーっとしているように思えて実は頭の中は考えることで常にフル稼働しているんです。今日のお昼ご飯は何にしようか、昨日食べた定食が美味しかった、仕事のやり残しを思い出した。など多岐にわたって考えが縦横無尽に出てきています。
そしてそれに伴って生じてくる、感情というものもあります。心配になったり不安になったり焦ったり落ち込んだり。嬉しくなったり、少しだけ頑張れるパワーをもらえたり・・・
思考を働かせることで、良い方向に気持ちが向いたり、建設的な方向にエネルギーを向けることができれば問題ないのですが、多くの場合、自分を批判する考えや、後悔の念、一人反省会をするなどネガティブな方向に思考が入ってしまい、気持ち的にも沈んでしまう。また沼にハマってしまうように思考のネガティブループから脱出できないなんてこと結構あるんじゃないでしょうか。今回は以前紹介した「今、ここ」という考え方、心理的状態について解説をしていきたいと思います。人間なら誰しも巻き起こる思考の嵐、思考の沼からの脱出方法について考えていきましょう。
今回は、知っていると得するグルグル思考からの脱出方法についてのお話です。
私たちの思考について
「自動思考」という言葉をご存知でしょうか。言葉の通り、自動的に出てくる思考を指します。これを読んでいる最中も、脳みそはせっせと自動思考を生み出しています。それは湧き出てくる水のように常に出続けているイメージです。
今私は記事を書いていますが、その間にも5感を通じてさまざまな刺激をキャッチしています。エアコンの音やキーボードを打つ感覚、部屋の匂いやコーヒーの後味など。そして頭の中では、今日のお昼ご飯は何を食べようか、この記事は誰が読んでくれるのだろうかと考え、ワクワクしたり少し緊張したりしています。あえて今詳細に書いていますが、こんなことが日常生活では変わるがわるほぼ無意識的に自動で処理されています。私たちが一瞬一瞬膨大な量の刺激を処理しているので、一日単位で考えると一体どれだけの情報を処理していることになるのでしょうか・・・。一つ一つ感知していたら頭がパンクしてしまうし、目の前の作業に集中できないので無意識的に処理が行われているのかもしれません。ただ、ほとんどが無意識的に処理されるのですが、考え(思考)だけは違っていて、割と主張が強いのです。心の声とか頭の中の考え、なんて言うと分かりやすいかもしれません。反対に、思考というのは主張が強いので、一日中頭の中で何かを考えているという、思考に支配されやすい状態とも言えます。
思考に振り回されてしまう理由
自動思考について説明をしましたが、私たちは常に頭の中に考えが湧き出ている状態です。ではどんなことについて考えていることが多いでしょうか?それは過去のことや、これから先の未来のことが多いのではないでしょうか。失敗や後悔、トラウマなどは過去のこと、進路や老後についての心配や不安は未来のことですよね。そう考えていくと、私たちの頭の中は昔のことや未来のことでいっぱいです。そこにくっつく感情としては、後悔、不安、心配、緊張、怒りなどではないでしょうか。もちろん楽しみや懐かしんだりセンチメンタルな感情もあると思いますが、それは日常生活であんまり問題にはなりにくいですよね。
まだ狩りをしていた時代は、過去と照らし合わせて今の状況が安心安全か、このままの状態で食糧が持つか、など先々の心配をすることで生存確率を高めてきました。その名残りかもしれません。生存と種の保存は動物の宿命と言えるほど重要なことなので、このような思考の特徴は遺伝子レベルで受け継がれてきたのかもしれません。それゆえに、思考の力というのは強力で、私たちに与える影響は大きいのです。
思考の沼
現代はコミュニケーションを通じて他者とのやりとりが重要視される社会性が求められる時代ですよね。その手段として言葉を用いることがほとんどです。つまり現代を生きる人にとって他者と言語でコミュニケーションをとることはとても重要だということです。そして、自分の頭の中に絶えず湧き上がってくる思考も言葉です。この言葉を操っていろんな考えをしたり、起こるかもしれないことを想像してストーリーを作り上げたりすることは現代人にとっては大得意なわけです。人間関係に疑心暗鬼になったり、今日一日の脳内反省会をする場面でも思考のネガティブストーリーというのは、まことしやかに思考として自分自身に語られ続けるのです。すると不安になったり自己嫌悪になったり感情が動きます、するとまたそれを餌として思考が活発に動いていくという、、足掻けば足掻くほど落ちていくという、まさに沼なわけです。
思考に関する3つの衝撃の事実
- 1、思考は真実とは限らない
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遠慮して「限らない」と書きましたが、「真実ではない」と思うくらいの意気込みでも良いかもしれません。今までお話をしてきたように、思考というのは湧き続ける水のようなものです。ではどこから湧いてくるか、、それは自分自身の脳からです。私たち人間はみんな「主観的な世界」を生きています。言い換えると、自分の感じる世界をそれぞれが生きています。同じ場所にいても人によって関心を持つ場所が違えば、見ているものも違うし、感じることも正反対だったりしますよね。なので、頭の中に出てくる思考=心の声というのは、自分の目線を通して感じ取っている、非常に偏った考えであることがほとんどです。見た目すごく愛想が悪い人で嫌な人だと思っても、話してみると案外良い人で人見知りなだけだった、とか結構ありますよね。
- 2、ネガティブ思考は無くならない
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残念ですが、ネガティブ思考は消えることはありません。ともに生きていく存在かもしれませんね。理由としては、前述した「遺伝子レベルに組み込まれた生きる工夫」だから、というのとポジティブ思考とネガティブ思考って良い悪いという判断がされがちですが、意外に表裏一体だったりします。ネガティブ思考にも役割はあって、エネルギーの源になっている人もいるかもしれませんね。
- 3、グルグル思考にハマるキーワードの存在
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グルグル思考にハマってしまうきっかけはなんでしょうか?思い返してみると共通するテーマがあるかもしれません。自分はダメだ、周囲より劣っているという考えや、誰かに言われた自分を傷つける言葉を思い出してしまうことかもしれないし、過去と比較した現在の自分への不充足感かもしれません。何でもかんでも刺激に反応してグルグル思考にハマるのではなく、規則性やパターンがあるのかもしれません。
脱!グルグル思考
今まで絶対的だと感じてきた思考や心の声が、実はグルグル思考の生みの親だったとは・・・!しかも真実とは限らない、って私は信じないわよ、と思うかもしれませんね。だって今まで信じてきたものを急に今日から疑ってくださいと言われても、と。
では、あなたの大好きな食べ物、みんな大好きでしょうか?あなたの好きな匂い、みんな好きでしょうか?これについては、「好みは人それぞれでしょう」と思いますよね。では、あなたの考えていることはみんな考えているでしょうか?と言われると、「うーん・・・」となってしまう不思議。これについては今までのところで、あなた独自のものです、とお伝えしてきましたね。好きな食べ物、匂いが人それぞれ感じ方が違うように、思考だって人それぞれ。客観的な事実とはまた別です。
まずは、このことへの気づきが大切です。心の声、うちなる声、聞いていただいて構いませんし、時には重要な役割をする時だってあるでしょう。しかし、自分に悪影響を及ぼすグルグル思考を生み出すことだってあります。そのような時には、「でた、グルグル思考」と沼にハマらず、沼の淵から一歩引いて「こういう考えが湧き出てきているな」と気づくということです。湧き出てくることは真実とは限りませんし、それを追求しても沼にハマるだけです。
今、この瞬間へ意識を向けましょう。
先述したように、思考が得意なのは「過去と未来についてリアルに考えること」です。5感が得意なのは「今この瞬間の情報に意識を向けること」です。思考が暴走してグルグル思考を生み出している時には、5感から入ってくる刺激を気にすると思考と程よい距離が取れるかもしれません。
5感とは、音、味、見えるもの、感触、匂いです。これに呼吸を加えてもいいかもしれません。心臓の鼓動や脈を打っていることに気持ちを向けてもいいかもしれません。
またイメージ戦略として、グルグル思考に囚われている自分を、浮き足立っていると感じている方は、地面に着地したイメージと共に地面から伝わる感触に意識を向けてもいいかもしれません。また、グルグル思考で体が固まっている感覚のある方は、少し顎をあげて優しく呼吸しながら、固まった体から力が抜けふわっと浮くイメージをしてみてもいいかもしれません。
①思考は真実ではない
②自分の自動思考に気づく
③自分が作ったネガティブストーリーの世界から、今この瞬間の世界に戻ってくる
まとめ
私たち人間が持つスキル、思考能力のおかげで社会が発展してきました。一方でその働きが影響して心の問題を複雑にしてしまっている側面もあります。日常生活では考えることがいっぱいで、情報に埋もれてしまうような世界です。そのような時だからこそ、自分の思考の癖や特性に気づき、上手に付き合っていくことが大切なのかもしれません。
皆様の理解の一助になれば幸いです。
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