自尊心や自己肯定感という言葉がありますが、皆さんはこの言葉についてどう思いますか?
日々のカウンセリングの中で「自尊心が低い」「自己肯定感が低い」「自分に自信がない」というご相談はとても多いです。
もちろん、自尊心や自己肯定感が低いからこそ、高みを目指して頑張るぞ、とモチベーションになっている方は問題ないのですが、自尊心や自己肯定感が低いが故に日々の生活に支障が出てくると具合が悪いです。
そして、自己肯定感や自尊心というのは自分の中のお話だと思っていませんか?実は自己評価というのは、自分がいる環境や所属している集団からの影響を強く受けるのです。自己評価と環境との相互作用について考えていきましょう。
今回は知って得する自己評価と環境とのつながりのお話です。
自尊心とか自己肯定感って一体何?
この2つの言葉の意味自体にはあまり差異がないと考えていますが、要するに「今の自分をどの程度受け入れられており、満足しているか」というようにまとめることができると思います。
この感覚はあくまでも主観で決まるので、いくら周囲から「あの人は自尊心や自己肯定感が高いに違いない」と思われていても、当の本人が謙遜ではなく「自分は全然ダメだ」と思っている可能性も十分にあります。
自尊心や自己肯定感はあくまでも「本人が自分自身に対して行う自己評価」ということになってきます。
つまり極論は、「本人次第」になるわけです。当の本人が「自分は自分で大丈夫」「今の自分に満足しているぞ」と思えることができれば自己肯定感・自尊心は高い状態にあると言えますよね。
ただ、そういう方々でも日によって、あるいはストレスの具合によって波があるのは当然です。
・自尊心や自己肯定感は自分自身が行う自己評価
環境に適応しているかどうか
自分が今いる集団に適応しているかどうかというのを「環境とのマッチング」と呼んでいます。
私がよく言っているだけで専門用語でもなんでもないので調べても出てこないと思いますし、適切かどうかもわかりません・・・
前章でお伝えした自尊心とか自己肯定感という内容は、あくまでもご本人の中での価値観のお話です。ただ、人間は一人では生きていはいけませんよね。学校や会社、近所の人、SNS、家族、みんなどこかの集団に所属しています。
大きく捉えると、この日本、あるいはこの地球に所属しているとも考えられます。環境とのマッチングとは、今所属している集団と自分の相性は合っているのか合っていないのか、ということです。
自分の能力を発揮しやすい環境と、発揮しにくい環境とがあります。自分の能力を発揮しやすい環境を、環境とのマッチングができていると言い、自分の能力を発揮しにくい環境を環境とのマッチングができていないと言っています。
それは集団に所属するメンバーのタイプかもしれないし、その集団のレベルかもしれないし、ポリシーかもしれません。
例えば、カリスマ的な社長について行ってその人の下で働くのがとても楽しいという人もいれば、上下関係のないフラットな関係を好み自由が確保された状態で働くのが好きだという人もいます。あるいは、進学塾で周囲の意識が非常に高い環境に身を置く方が良いという人もいれば、マウントの取り合いがとにかく嫌いだから個別塾で自分のペースでコツコツやりたいという人もいるでしょう。
- 環境とのマッチングができている場合
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自分のタイプとその環境がうまくマッチングしていればストレスはないでしょうし、自分は上手くやれているという感覚も育っていくことでしょう。また、それを客観的に認めて評価してくれる人の存在も大切ですが、その集団の雰囲気にあった人たちが自然に集まってきたり、次第にその集団の価値観が馴染んでくるということもあると思います。そうするとその集団の環境にあった行動や思考をすることで、よりその集団と馴染んでいき、周囲からも認められ受け入れられていく・・という集団心理が働きます。つまり、環境と上手くマッチングできている環境に身を置くと自然に周囲から評価され受け入れられる雰囲気になっていくということです。
- 環境とのマッチングができていない場合
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ここまで読んだ方の中には、環境とのマッチングができていない場合のデメリットがすでにいくつも浮かんでいるかもしれませんね。自信や自己評価が下がったり、周囲からの指摘や助言によってネガティブループにハマってしまう人もいるかもしれません。ここで述べたのは、自分にとってレベルの高い環境という設定ですが、反対に自分には簡単すぎる環境に居続けるというのも環境マッチングできていない状態になります。極端な話、「チート状態」というのはゲームの世界では優越感があるかもしれませんが、現実世界では意欲の低下やストレスの原因になる場合があるのです。
環境とのマッチングという視点は、環境という自分以外の要因が結局は自分と環境という相互作用によって、自分の心にも大きな影響を与えるということが分かります。
あえて言葉にしていますが、この感覚分かるよ、という方は多いのではないでしょうか。
言い換えると、それだけ環境とのマッチングができていない状態とわかっていながら、その環境に身を置き続ける人が多いということです。
・人それぞれに適した環境があり、所属した環境とのマッチングができていれば力を発揮しやすく、マッチングができていないと力が発揮しにくくなってしまう。
環境とのマッチングができていない場所に居続けてしまう理由3つ
- 新しい環境に移るよりも現状維持の方がストレスが少ないと感じる
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人間の行動原理として「ホメオスタシス」とか「コンフォートゾーン」という用語があります。簡単にいうと、現状維持が一番落ち着く、というのが遺伝的に組み込まれている動物としての習性という事です。客観的にみて明らかに環境マッチングできていない場合でもこの習性があることでネガティブループの外側に行けないということは多々あります。
私は今までこの例として「知らぬ仏より馴染みの鬼、的なやつですよねー」と言っていましたが、調べてみると全然意味が違っていました・・・
- 環境とのマッチングができていない状態を維持することで視野が狭くなり違う選択肢を取れなくなる
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大抵の人は、環境マッチングできていないことで自分の能力が発揮されない、とは考えません。自責と言って、自分を責めます。もっと頑張らなくちゃとか、努力が足りないんだ、とかあるいは自分に失望して無気力になったり。そうなった場合、自分の視野はどんどん狭まっていき柔軟な思考や客観的な考えは取りにくくなっていきます。どんどん追い込まれていきますよね。そのモードになっている時には、不思議としんどくない、という方が多いです。アドレナリンが出て「頑張るぞー」となっている時は頑張れてしまうんです。ただ時間と共に身体や心に限界がきて不調をきたす方が多いと感じます。詳しくは以下をご覧ください。
臨床心理士が解説 知っていると得するメンタルヘルスに活かせる自律神経の話 魔法の言葉「〇〇」でネガテ… *自律神経と言えども非常に幅広く奥が深いです。ここではメンタルヘルスに有用な自律神経系の知識についてお伝えをします。 近年、心や身体の不調に自律神経が関わってい… - そのほかの選択肢が少ない(無い)
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特にお子さんの場合、学校という環境が合わないという方はとっても多いです。それは発達のでこぼこやアンバランスの影響もあるでしょうし(詳しくは以下のリンクから)、その学年の雰囲気というのもあるでしょう。単純にイジメが横行している学校にマッチングする人というのはとても少ないです。
では、自分にあった環境を探しましょう、と行動を起こすことへの不安と選択肢の少なさ・・・。お子さんだけでなく、物理的に選択肢が限られているという方も多いと思います。
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今後のアクションプランについて
- 合わない環境から離れて、環境とのマッチングができる場所を探す
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もっとも行動力を必要とする選択肢ですが、大きく状況が変わる期待があります。環境とのマッチングができる場所、役割を探すためには「今の環境はどんなところがマッチしていなかったのか」について考えることは重要です。それは自分を責めるためではなく次に進むための材料としてです。その中で、自分が憧れていた場所と環境とのマッチングができる場所とでギャップがあるかもしれません。その折り合いをどうつけていくかという課題も発生するかもしれません。
- 合わない環境の中でも、自分の力が発揮できるような場所役割を探す
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社会人の場合、部署移動などの人事に関することになるし、学生の場合は転籍(通常級から発達支援級など)、個別指導の利用、放課後デイサービス、フリースクールなどの支援を手厚くする事などが考えられます。
- 現状維持
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様々な選択肢を考えた結果、現状維持というのもありえるでしょう。その場合には、心身の状態を観察したり今よりも悪い状況にならないような工夫が必要な場合もあるでしょう。
まとめ
環境とのマッチングのお話をすると、たまに「自分のことは棚上げして環境のせいにしているのではないか」というお声を聞きます。確かにそういう見方もあります。ただ、「なぜ自分のことを棚上げして環境のせいにしなければならない状況に陥っているのか」について考える必要があると思っています。人間誰しも、生まれた時からサボりたい訳ではないし努力嫌いではないでしょう。その一面が遮られている理由を探す上で、「自分の能力を発揮しやすい環境に身を置いているかどうか」というのはとても大切な視点だと考えています。
皆さんの理解の一助になれば幸いです。
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