臨床心理士が解説 4つのタイプで見る発達のアンバランス!発達の凸凹って一体何?

世の中に発達障害という言葉は随分と浸透してきて、病院にかかったり児童発達支援センターや放課後デイサービスを利用しているという方も多いはずです。また、発達障害に関する記事、ブログ等は多く存在します。

しかし、世の中にはグレーゾーンと呼ばれる、「受診して診断名がつくほどでもないと思うけど日常生活で困り感がある」という方はとてもとても多いのです。私自身、30箇所以上の幼稚園、保育園、小学校を周って教員対象に「気になる子」について解説と対応方法を伝えるという仕事をしてきましたので、グレーゾーンの方の生きにくさと周囲の対応の難しさというのは痛感しております。

このテーマについて話す上で「発達のアンバランス」という視点は欠かせません。

そして大切なのは「発達のアンバランス」というのは全人類共通して持つ特徴だ、という事への理解です。

完璧な人はいませんよね?それと一緒で「完全に平均的な人」はいません。みなさん何かしら得意で、何かしら苦手なのです。それを解説していきます。

知っていると得する、みんなに当てはまる発達のアンバランスについてのお話です。


目次

これ、意外に難しい質問ではないですか?

ここでは「滝川一廣先生の子どものための精神医学」を参考に解説していきます。

・深く分かる力の発達

IQ(知能指数)という概念があります。これは、物事を論理的に考える力を数値化したものです。言い換えると、どのくらい世の中について深く考えて分かっているのかを知るためのものです。当たり前ですが、1歳児より、30歳の大人の方がこの力は高いですよね。では具体的にどんなものかを見ていきましょう。

ロボット掃除機はどんどん高性能になって今やレーザーとカメラで物体を捉えて部屋をスキャンするという機能があるものもあります。物体を検知すると当たらないように回避したりUターンをします。これはある意味、動物でもできますよね。ハイハイができるようになった赤ちゃんもできます。

目の前の物体を物体として分かる力。これは「認知」という能力です。

では、ロボット掃除機は検知した物体が「母から譲り受けた大切な棚」というのは分かるでしょうか?また「この棚にとても愛着を持っていて中には印鑑と通帳が入っている」ということは分かるでしょうか?これが認識という能力です。わかりやすく言うと“深く分かる力”です。人間はこの力を駆使して高度な社会生活を送っています。

つまり「認知」と言うのは何を見ても同じ物体ですし、それ以上もそれ以下もありません。

「認識」(深く分かる力)と言うのは、捉えた物一つ一つのエピソードや情報や知識が複雑にセットになっており、その物体の独自性というものが出てきます。

この力は、生まれたての赤ちゃんにはほとんど備わっていません。様々な経験をしたり知識をつけることで育まれ発達していくのです。

・人と関係を築く力の発達

今お話しした「深く分かる力」というのは、自分から知ろうとして知識や情報を経験していくというスタンスが大切です。一方で人との関係を築く力の発達は、相手からくるものを受け取る力が大切になってきます。

人と関係を築く力が発達することで「自分1人では知り得ない情報や知識、エピソード」について知ることができるのです。例えば「しつけ」を考えてみましょう。子どもが危険なことやマナー違反をしたときに大人は注意したり叱りますよね。それをすることで、子どもは自分1人では知り得なかった「安心安全に生きるための術」を身につけることができるのです。

分1人の世界を広げていく「深く考える力」の発達に対して、人と関係を築く力の発達というのは人と関わることで人間社会やこの環境における適切な生き方を学ぶことに大きく影響してきます。

皆さんご承知の通り、人間社会というのはコミュニケーション社会です。1人で生きていくことができません。上手に他人と付き合い、さまざまな媒体から情報を仕入れていくことが大切で、人間社会では特にこのコミュニケーション能力の発達というのが重要視されているのです。

・「深く分かる力」と「人と関係を築く力」とが相乗効果で発達

この2つの力はそれぞれ単体で存在しているわけではありません。お互いがお互いに影響して常に相乗効果で発達していきます。「深く分かる力」が発達することで、より複雑な人間社会のルールやマナーの重要性が分かったり、それが分かることで、相手の気持ちを想像して自分らしくどのように振る舞えば良いかを深く考えることができるというわけです。

Point!

・深く分かる力=IQは周囲の物事をどのくらい論理的に理解しているかについての力

・人と関係を築く力は周囲の大人から人間社会のルールや規則について取り込む力

・深く分かる力と人と関係を築く力は相乗効果でお互い支え合って成長していく

ここまで、「深く分かる力」と「人と関係を築く力」の発達について述べてきて、相乗効果についてもお伝えしました。

ではこれがアンバランスとはどういう状態でしょうか?言い換えると、得意なことと苦手なことの差が大きい、とも表現できますが、それはどういうことでしょうか。

例えば、「深く分かる力」が同年代よりも苦手な場合、年齢相応の指示・説明というのは難しく感じることでしょう。またその際に使われる単語一つ一つについてもわからないものが多くなるかもしれません。どの部分が苦手になるかによって個性が出てきます。

「人と関係を築く」力が同年代よりも苦手な場合、人と繋がることに難しさを感じることとなります。人と相談したり意見を交換することで得る知識よりも自分独自でたどり着くものが多くなるでしょう。

「深く分かる力」と「人と関係を築く力」が同年齢に比べてある程度の範囲に収まっているようなら、発達のアンバランスさはあまりないね、というお話になります。

逆に、何かが特に苦手、特に得意、となるとアンバランスさがあるね、と言われる要因となります。

組み合わせについて考えてみましたが、あくまで「あるある」ですので、当てはまった、もしくはどれにも当てはまらないと落ち込んだり怒ったりしないでくださいね。今までの1、2について自分に当てはめて考えてみましょう。

①「深く分かる力」も「人と関係を築く力」も平均〜高い

このタイプは、自分1人でそれなりに考えることができ、かつ人の意見を参考にしながら生活ができる方です。特に困ったことや悩みが出てきた時には、自分なりの解決方法を持っているし、人と相談したりストレス発散をしたりして対処方法の手段に幅があります。

②「深く分かる力」は平均〜高い 「人と関係を築く力」は苦手

このタイプは、自分1人で思考していく力を持っている方ですが、周囲との人間関係や社会関係に苦手さを抱えていることが多いです。人に相談するよりも自分で考えて行動することが多くなりがちなので、たまに常識やモラルから外れてしまうこともあるかもしれません。また自分なりのルーチンで生活をしたいというこだわりを持つ方もおられます。相手の気持ちや裏の意図などにはあまり意識が向きにくく、色々な知識を用いて表面的な理解になることが多いので感情的な共感や寄り添いは苦手としている方が多いです。その一方で、人間関係に振り回されすぎないという長所を持っているので、1人で作業をしたりコツコツと向き合うと能力を発揮しやすいという方もいます。またネガティブな気持ちに対してもご本人なりの対処方法をお持ちの方が多い印象です。

③「深く考える力」は苦手、「人と関係を築く力」は平均〜高い

このタイプは、自分1人ではなかなか考えが展開しにくく効率性は劣りますが、周囲とコミュニケーションを取るのが上手なので、愛されキャラや天然キャラとして存在している方がおられます。自身の感情や想いについて他者と関係をとっていく中で整理したり発散していくこともあるようです。一方で、自分1人では分からないことが多いというのは不安なことです。この不安を解消する手段として人と繋がることが考えられますが、信頼できる人、信頼できる機関があるかどうか、というのがとても大切になってくると思います。

④「深く考える力」も「人と関係を築く力」も苦手

このタイプは、自分1人で考えを展開していくことも、人とコミュニケーションをとっていくことも苦手としている方です。今まで述べてきたタイプの方々に比べると、生きづらさを抱えている方の比率が高いのかもしれません。大勢の人とコミュニケーションを無理して取る必要はなく、行政機関や心理相談など信頼できる人、機関を探してみるのも良いかもしれません。

4タイプについては、「あるある」なので全ての人に共通したものではありませんが、「深く分かる力」と「人と関係を築く力」のバランスはどうなのかと考えてみるのも良いでしょう。

また、苦手なものを伸ばそうという考え方もありますし、それはそれで良いと思います。しかし、自分が内心「苦手だなあ」と薄々気づいている分野もあるはずです。そこについて、正面から克服の道を進むのか、得意なところを見つけ出して長所を伸ばしつつ問題を解決していくのか・・・。これは発達のアンバランスがあろうがなかろうが、避けては通れない道ではないでしょうか。グレーゾーンと言われる方々の中にはこの発達のアンバランスさで苦しんでいる方も多くいます。どこが得意でどこが苦手なのか、この視点で理解していくのも良いかと思います。

皆さんの理解の一助になれば幸いです。

Loose Drawing|無料で商用利用可能なフリーイラスト
https://loosedrawing.com/

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

静岡県浜松市にある、メロウカウンセリングオフィスを運営する臨床心理士、公認心理師。子どもから大人まで幅広くカウンセリングを行ってきた経験をもとに情報を発信していきます。感情コントロールや自分との付き合い方、トラウマケアに専門性を持ちます。
3児の父としても日々奮闘中。。。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次