臨床心理士が解説 知っていると得するメンタルヘルスに活かせる自律神経の話 魔法の言葉「〇〇」でネガティブ思考から脱却!!

*自律神経と言えども非常に幅広く奥が深いです。ここではメンタルヘルスに有用な自律神経系の知識についてお伝えをします。

近年、心や身体の不調に自律神経が関わっていると言うことが分かり始めてきました。自分の心や身体の維持、ケアのために自律神経系について勉強をしたいという方も増えてきているのではないでしょうか。

ただ、自律神経系を全て網羅しようとなるととてもじゃないですが追いつききりません。ここでは、児童精神科で10年カウンセリングを行ってきた臨床心理士、公認心理師の私が解説していきます。

知っていると得する、メンタルケアに活かせる自律神経の知識のお話です

自律神経とは自分の意志とは関係なく働いている体の神経のことです。例えば緊張すると胸がドキドキする、運動をすると汗をかくなど、我慢しようと思っても無理ですよね。このように自分が置かれた状況に対して、気持ちや身体の感覚は自律神経系を通じて日々反応しています。気持ちや身体の感覚が乱れた時には自律神経を落ち着かせる取り組みをして心の安定を図ろう、というお話です。

目次

・ポリヴェーガル理論

1994年にアメリカの神経生理学者、ステファン・W・ポージェス博士が発表した理論です。博士は自律神経系を3つのステージに分けました。以下に表を載せますが、言葉自体が難しいので今は「ふーん」と思っていただければOKです。

簡単に言うとこれが全てです。これを説明していきます

私たちは日常生活の中で、大きく分けると活動的にたくさん行動する時とゆっくり休む時があります。

活動的にたくさん行動しているときに優位になっているのが交感神経系です。交感神経系が優位になると、いわゆる「仕事モード」「学校モード」になり心拍数を上げて社会生活に必要なタスクをこなしていく活力が湧いてきます。この時自分の内面へ意識が向くことは少なく、それよりも仕事や課題など目の前の現実に対処をすることが優先されます。また不安緊張、イライラ等も交感神経系が優位になっている時の特徴です。

そうして仕事が終わり帰宅すると、ソファーに座り「今日も一日疲れた」と1日を振り返るかもしれません。その時のゆったりくつろいでいる時に優位になっているのが副交感神経系です。副交感神経系が優位になると、目の前の現実的な課題よりも、自分の内側の「消化活動」「1日の振り返り」などができるようになります。家に着くとトイレに行きたくなると言うのはこのためです。また副交感神経系が優位になることで自然な眠気や食欲が湧いてきます。

ポージェス博士はこの副交感神経系をさらに2つに分けました。

例えば仕事や学校が終わり帰宅した場面を想像してください。今日はハプニングだらけでその対応に追われ日々のルーチンを回すだけでも大変なのに新たな課題が次々とやってくる大変な日だった・・いますぐ帰りたい。という日もあるでしょう。

またある日は、金曜日でいつもよりゆったりと活動ができ、会社や学校でやることが終わって帰れる状況でもなぜかその場に留まって、友達や同僚先輩とダラダラ楽しい雑談をしてしまうという日もあると思います。

この2つはどちらも、仕事や学校という交感神経系が優位になりやすい環境から、副交感神経系が優位になる様子を見たものです。

ただ、前者は「疲れ切った。。1人になりたい。いますぐ横になって休みたい」というパターンで、後者は「程よい疲れがあって友達や同僚と楽しいおしゃべり。今すぐ帰るのは何か寂しいな」という具合です。

同じ副交感神経系が優位になっているのにどういうことでしょうか?

これは以下のように分類されました。

・腹側迷走神経系

人間は他の動物とは違い人との繋がりを大切にする生き物です。人との繋がりを維持することは同時に生命を維持することと言い切れるほど重要です。この腹側迷走神経系が優位な時には人と穏やかにコミュニケーションが取れたり、落ち着いて交渉ができたり人との繋がりを維持するためにとても大切な役割を担います。

・背側迷走神経系

人と関わる余裕すらない疲れ切った状態や疲弊している状態では、人との繋がりを維持するどころではありません。まずは個としてエネルギー回復をしなければなりません。そういう時は、他者との関わりから離れて1人でゆったりと休んだり食事をする必要がありますよね。休養モードとも言えます。

仕事モード、学校モードで社会生活のために心拍数を上げたり、筋肉の活動が活発になったりする。自分のことよりも社会適応を第一に考えて、テキパキ動いたり効率的に行動することができる。不安、緊張、イライラしているのも交感神経が優位になっている一つの特徴です。

以上の、交感神経系、腹側迷走神経系、背側迷走神経系という3つの状態を知り、活用することでメンタルヘルスの維持向上に役立てることができます。

⚫︎「今ここ」ってなに?

人間は頭がいいので、今の状況に対して過去の体験と照らし合わせ、現在や未来への心配、不安を引き起こすことがあります。そうしてグルグルとネガティブな考えの渦に巻き込まれ行くことってありますよね。

「今、ここ」と言う考え方は、そうしたものとは全く違います。今この瞬間を生きている感覚に意識を向けて、ネガティブ思考の渦から脱出する方法です。気分が良くなると「さっきまで過去の後悔や未来への不安について悩んでいたのに、今はあんまり気にならない」と言うことがあるように、思考というのは「真実」ではありません。その時々の感情や状況に大きく影響されています。故に、ネガティブ思考の渦から脱出することは大切なのです。

⚫︎「今ここ」に意識を向ける方法

「今、ここ」の感覚を感じられない時は、視野が狭くなり窮屈な「〇〇でなければならない」「完璧主義」的な思考に支配されがちです。そのような時には下記の行動を試してみましょう。五感+呼吸と覚えてください。人間の五感は全て「今、ここ」を体験しています。思考に支配されそうになったら、五感+呼吸で「今、ここ」に戻りましょう。

  • 深呼吸
  • 周囲をキョロキョロ見渡す
  • 音、匂い等感覚的なものに意識を向ける
  • 手を洗う

⚫︎「今ここ」での自分の状態を観察する

今この瞬間のあなたはこれまでに示した、交感神経系、腹側迷走神経系、背側迷走神経系のどの状態でしょうか?

具体的には、緊張、興奮、イライラ、不安を伴う「バリバリ活動モード」か、リラックスを必要とする「人とまったりおしゃべりモード」か「1人で休息モード」か・・・

まずは自分の状態を観察して、どのモードにいるのかを分析してみましょう。

⚫︎自分の気持ちの変化に気づく

「今、ここ」に意識を向けることができ、今の自律神経系の状態を観察したら、最後に自分の気持ちにもう一度意識を向けてみましょう。「さっきより落ち着いた」と感じる方もいるし、「ここは頑張りどころ」と集中力が増す方も多いようです。

Point!

・思考や感情に流されず「今ここ」の感覚に意識を向けてみる

・呼吸+五感で「今ここ」に留まる

・「今ここ」での自分がポジティブでもネガティブでもそれを観察する

冒頭で、自律神経系は自分の置かれている状況に合わせて反応する、と言いました。つまり、自分自身の「こうでなければいけない」というこだわり、考え、信念は全く関係ありません。状況に合わせて勝手に反応してしまうのです。「こういう状況で、自分の自律神経系がこう反応している」という事実しかありません。言い方を変えれば「身体の言うことに耳を傾ける」とも言えるでしょう。思考はとても賢くて人間を人間たらしめるものですが、自律神経系(身体)もとてもパワフルであることがお分かりいただけたでしょうか。

皆さんの理解の一助になれば幸いです。

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この記事を書いた人

静岡県浜松市にある、メロウカウンセリングオフィスを運営する臨床心理士、公認心理師。子どもから大人まで幅広くカウンセリングを行ってきた経験をもとに情報を発信していきます。感情コントロールや自分との付き合い方、トラウマケアに専門性を持ちます。
3児の父としても日々奮闘中。。。

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